在宅透析とは患者様のご自宅に透析装置を設置し、医師の管理のもとご自身、介助者とともに施設同様の血液透析を行う方法です。
在宅透析には以下のようなメリットがあり、実際に行っている患者様も高い満足度を感じている治療法です。
・治療面
正常な腎臓は毎日休むことなく働いているため、出来るだけ透析の回数を増やし、長時間行うことが理想です。しかし施設透析では保険診療で月に14回までしか行えず、施設のベッド状況などによって長時間の透析を行う事が難しいのが現状です。透析量の指標で用いられるHDP※が施設透析の36(週3回、4時間)であるのに対し、在宅透析では回数や時間の制限がないため、高いHDPを確保し正常な腎臓の機能に近づけることが可能な治療といえます。また、透析導入期から在宅透析を行うことで腎機能の保持にも期待できます。
※HDP=1回の透析時間×(1週間の透析回数)2で計算し、理想は72以上とされています。
・体調面
透析患者様の多くが感じているストレスに飲水、食事制限があります。在宅透析では透析の回数を増やしたり、時間を延ばすことで制限を緩めることが可能です。他にも透析1回あたりの除水量が少なく抑えられることや除水速度が緩徐になることで血圧が安定しやすくなります。また、透析量の確保が可能になるため採血データが安定し、体調の安定、合併症リスクの軽減、内服薬の減量も望めます。
・生活面
施設透析では通院時間で時間をとられることや、決まった時間に入室しなければならないという時間的拘束により、お仕事を早く切り上げなければならなかったり、ご家族と一緒に過ごす時間が削られてしまったりすることがあるかと思います。在宅透析では医師と患者様で決まった透析回数、透析時間をお仕事やプライベートのお時間に支障をきたさないスケジュールをご自身で組んで治療を行えるためQOLを高く保つことが出来ます。また、ご自宅で行う事で感染症リスクの軽減にも繋がります。
現時点で38歳~82歳までの幅広い年齢層の在宅透析患者様の管理実績があり、当院から50km以上離れた場所にお住いの患者様の管理も行っております。トレーニングでは年齢や性格に合わせた患者様毎のトレーニングマニュアルを作製し、患者様に自信をもって在宅透析へ移行していただけるよう努力しております。また小規模クリニックでの特性を活かし、患者様とのコミュニケーションを大切にし、何でも相談のしやすい環境づくりに取り組んでおります。
・安心してHHDを行っていただくために、患者様が希望され、当院が必要と判断した場合に支援システムを導入しております。透析中の、バイタル・治療データ・進捗状況をリアルタイムで共有することが出来ます。
・患者様のご負担はネット環境のみ。システムに使用するタブレット代、月額費用のご負担はございません。
当院と在宅透析患者様のLineグループを作成し、当院からの共有事項の発信、患者様からの質問事項などの場とさせていただいております。
基本的に施設でトレーニングを行いながら、ご自宅を在宅透析が行える環境に整えていきます。
・当院のご自宅下見では、臨床工学技士と看護師、透析装置メーカー、薬剤師がお伺いし、主に透析を行う空間の環境の確認、現状の電気・水道設備の確認など行います。
・工事会社のご自宅下見では、透析装置メーカーと工事会社担当者がお伺いし、電気・水道工事予定箇所の確認を行います。
・工事を行った後、透析装置メーカーがお伺いし、透析装置を問題なく設置出来るかの確認を行います。
1カ月分の物品収納のイメージ
- ご本人の強い希望があること
- 自己管理能力があること
- 支障となる合併症がなく、安定した施設透析が行えていること
- 介助者がいること(血縁は関係なし)
- 透析装置(横120cm×奥行60cm)や1か月分の物品を保管するスペースが確保出来ること
- 住居が賃貸物件の場合は、工事可能であること
在宅透析開始前の準備風景
毎回同じお時間に行っていただく必要はありません。採血データや残腎機能を考慮した透析時間、回数を医師と相談し決めていきます。
例
・50代女性、在宅透析歴1年、週5回、1回3~3.5時間 HDP=75~87.5
・40代男性、在宅透析歴8年、1日おき、1回6時間 HDP=54~96
・60代女性、在宅透析歴11年、連日、1回3時間 HDP=147
・70代男性、在宅透析歴13年、連日、1回2.5時間 HDP=122.5
・50代女性、在宅透析歴6年、週4回、1回2.5~3時間 HDP=40~48(残腎あり)
- 食事、水分摂取の制限が緩くなりストレスが軽減しました。
- 旅行や飲み会の時は自分で透析の日程を調整できるのは大きな利点です。
- 食事を均等の時間で摂ることが出来るようになりました。
- 内服薬が減りました。
- 自分に合わせてエアコンを調節できるので気が楽です。
- 透析中でも周りを気にせず電話が出来ます。
- 天候や通院手段のことを気にしなくてよくなりました。
- 透析後の移動がないので血圧低下等の心配がありません。
- 体調が安定しました。
- 1回あたりの除水量が少ないため血圧が下がりづらくなりました。
- 長い時間の透析は辛いので、短い時間を頻回で出来て助かっています。
Q1.年齢制限はありますか?
年齢制限はございません。当院では70歳後半で在宅透析へ移行された患者様もいらっしゃいます。
Q2.介助者とはどのような人?
患者様が透析を行う際に付き添い、ご自身で行いづらい手技、トラブル対応の介助の役割を担います。血縁は関係ありません。
Q3.賃貸住宅でも行えるの?
管理会社にご確認いただき、許可が下りれば可能です。(原状復帰を条件に許可された事例などを経験しています。)
Q4.トレーニング期間はどれくらいかかるの?
トレーニングは週3回の透析の際に、患者様専用のマニュアルをご用意させていただき行います。期間は3ヶ月ほどで移行される患者様が多いですが、焦らずご自身のペースで行って頂いています。
Q5.透析のスケジュールはどのように決めますか?
日常生活に支障をきたさないよう残腎機能に合わせて決めます。(当院の例:2時間で毎日、3時間で週5回、6時間で週4回)
Q6.費用はどれくらいかかりますか?
医療費は施設透析と変わりません。その他に光熱費が毎月1.5倍~2.0倍弱のご負担となります。またご自宅の設備工事費として5万円~15万円ほどかかります。
物品などの配送費用は月1回まで当院で負担します。
Q7.ゴミの処理はどのようにしたらよいですか?
ご自宅に専用のごみ箱を設置させていただき、定期的に当院もしくは薬局が引き上げます。
Q8.トラブルの際はどのように対応したらよいですか?
トレーニングのカリキュラムにトラブル対応の手技を組み込んでおりますが、対応がうまくいかない、またはそれ以外のトラブルの場合は、診療時間内であれば当院へ、診療時間外の場合は在宅透析専用のスマートフォンへご連絡いただきます。
Q9.機械の管理について教えてください。
機械メーカーが年に1回点検に伺いますが、異変がみられた際は当院へご連絡いただき、内容によって機械メーカーもしくはスタッフが対応致します。
Q10.外来受診はどれほどの頻度ですか?
基本的に月に1回ご都合の良い日に受診していただきます。その際に胸部レントゲン、血液検査を行い、必要に応じて造血剤などの投与、定期的に超音波検査、CT検査を行います。